ある婚活者のネトゲの入り口

藤森泰彦(33歳独身ゲームオタク会社員)は、婚活のためという不純な動機でオンラインRPG「BLUESTONE」(BSと略)に登録した。
RPGには複数のジョブ(職業)があり、それぞれ長所と短所があることは良く知られている。
BSには10種類のジョブが用意されていた。
ジョブはファンタジー系RPGの王道らしく、前衛職の剣士・傭兵・シーフ・ビーストテイマー、後衛職の僧侶・魔術師、中間職の死霊術師などのジョブがある。
しかし老舗ゲームらしく、どのジョブもユーザーが長い間試行錯誤した末に育成方法が確立しているようだ。
その育成方法から大きく外れれば、ソロ狩りをするには非効率となり、パーティーを組むときに他メンバーに迷惑をかけかねない。
(奇をてらった「ネタキャラ」を育てるのであれば別問題で、実際そうした出オチ狙いのネタキャラを育てているユーザーも少なからずいるのだが)
そのため、BSのユーザーの大部分はそうならないためにも、非公式のユーザー交流掲示板にアクセスして攻略法を調べておくのだ。
そして、どのオンラインゲームであってもジョブ間のゲームバランスが完全に公平にできているゲームは少ない。
数多くのユーザーに支持されている人気ゲームであっても、初心者向けのジョブと玄人向けのジョブというものはあるものだ。
あるいは廃課金者向けのジョブや、無課金でもそれなりに強くできるジョブも存在することも多い。
BSの場合、どのジョブが最強かという論点であればユーザー間で大きく意見が分かれているが、初心者向け・無課金者向けのジョブというものはほぼ意見が一致していた。
それは魔術師だった。
BSの魔術師には大きく分けて攻撃系魔術師(これも火属性と氷属性にわかれるが)と支援系魔術師がある。
そのうち、氷属性の攻撃系魔術師は装備が揃っていなくてもそれなりにモンスターを狩れるため、初心者向け・無課金者向けの前衛職とされていた。
ただし、低レベルのうちは支援系魔法の習得は後回しになるため、パーティーを組む時は前衛職扱いになり、まずお呼びがかからない。
泰彦は以前遊んでいたミリタリー系ゲームでは廃課金をしていたが、BSではライト課金に抑えるつもりでいたから氷系魔術師のジョブを選んだ。
(俺は「魔法使い」じゃないぞ!)
自分は30歳を過ぎたけれども決して童貞ではないことをブツブツとモニターの前で主張する泰彦の姿は、はっきりいってイタイ。
これでは先が思いやられる。
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